太陽の季節 (新潮文庫) [文庫]
今回ご紹介するのは、石原慎太郎氏の『太陽の季節』です。
石原慎太郎といえば、言わずもがな現職の東京都知事ですね。すこし右よりの……。そしてあの石原裕次郎の兄貴でもあります。
もしかしたら、若い読者の方の中には石原裕次郎を知らない方もいるかもしれませんねぇ。さすがにもう2010年ですからね。キューブリックの中では、宇宙の旅ができる予定でしたから。
話が逸れましたが、この『太陽の季節』は石原慎太郎氏の1955年発表の芥川賞受賞作です。1955年といえば、今からもう50年以上も前になりますので、時代背景とか色々と現在とは違うようです。
ストーリーとしては、ある裕福な大学生がある女性と知り合ってから唐突な展開の別れにいたるまでの恋愛劇というか、当時の若者達の恋愛(もしかしたら思想)事情というものなのですが、そういったものがサクサクと、比較的あっさりと描写されていきます。
僕自身も実は最近初めて読んだのですが、かなり楽しく読むことが出来ました。全体的な雰囲気も乾いていて自分好みだったのもあるのですが、一番のお楽しみポイントとしては、何と言っても当時の台詞まわしなんかですね。
(引用開始)
「ありゃあ、お安くねぇな。誰だいあれ」
「――ヨットと較べりゃ車でひっかかるなんて程度の低い女にきまってらあ。第一海の上の方が着てるものが少ないし、裸だって良くわかるじゃねえか。お巡りだっていないや」
彼等は毎年船の名前を変えるのだ。一昨年は兄の提案でDANDY、昨年は竜哉が言い出してMOTERU(もてる)であった。カレは去年よりもくだけてONORI(お乗り)にしようとしたが、道久は、「女じゃあるまいし、意味が無い」と反対した。
(引用終了)
とちょっと拾っただけで、かなり香ばしい感じですな。ちょっと読みたくなってきたでしょ?
しかし『太陽の季節』と言えば、あれです。「障子破り」です。
未読の皆さんには全く持って分らないと思うのですが、『太陽の季節』と言えば、やっぱりこれかなと。
主人公の竜哉が、あれ(苦笑)で障子を破るシーンがあり、初めて読んだ時は、電車の中だったのですが、笑いを堪えるのに大変でした。
まあ、この描写も当時としては、かなりセンセーショナルな感じだったのだと思います。
と、滑稽気味に書評しましたが、なかなかどうして。青臭さを上手に閉じ込めた雰囲気、個人的には好きな作品です。
ではでは、また本を読んだらご紹介しますね。